先週早稲田通りを歩いていると古本屋で渡辺淳一著『遠き落日』上下を見つけました。値段は100円×2=200円でした。30年ぶりに買って再読しました。本当医に懐かしく,帯まで付いてたったの200円です。7年の歳月を費やした渡辺文学の最高傑作の一つだと思います。
この本は野口英世の実像に迫った伝記小説です。皆様が読んだことのある野口英世の伝記とはまったく違います。お金にだらしなく、借金を踏み倒し、女遊びをする。結婚詐欺、海外に逃げるように出て行って名を成す。破滅型の天才が描かれています。
野口は現在の東京歯科大学で用務員をやりながら独学し、難関の医師免許一発試験に合格します。用務員が翌日先生になっていたという伝説を作った人物です。東京帝国大学出身者は試験がなく、差別に苦しみながら努力だけでのし上がっていきます。
東京歯科医学院の歯科医師、血脇守之助は子孫に女に惚れても男には惚れるなと家訓を残したほど、野口英世にはお金をせびりとられていきます。小さい時にお金がいつもない状態だったので、あればあるだけあっという間に使い、いつも借金だけが残りました。
この本はぜひ読んでみてください。当時一流の細菌学者、野口英世が最近学の教科書に一つも名前が載っていないのはなぜか?この本は教えてくれます。整形外科医渡辺淳一先生の初期の本はどれも読みごたえがあります。題名は忘れましたが心臓移植を痛烈に批判した小説も読みごたえがあります。